視覚障害者とあはきの歩みと訪問マッサージで働きやすい現場づくりのポイント
視覚障害のある方とあん摩マッサージの関わりは、江戸時代にまで遡る長い歴史があります。現代でも多くの視覚障害者が、あはき業を生業としています。近年では在宅医療の広がりとともに、訪問マッサージという働き方が注目を集めており、視覚障害のある施術者も現場で活躍しています。この記事では、訪問マッサージの現場で直面する課題と、働きやすい現場づくりに向けたポイントについてご紹介します。
◎視覚障害者とあん摩マッサージの歴史的なつながり
あはきと呼ばれるあん摩・はり・きゅうは、古代中国で発達した漢方医学をもとに、身体が本来もつ回復する力を引き出す治療法です。6世紀に仏教とともに日本へ伝わり、701年に制定された大宝律令の医療制度には、すでに按摩生や鍼生といった記述がみられます。その後、病気の治療や健康維持の方法として、日本の医療文化のなかで広く受け継がれてきました。しかし当初は、あん摩やはりが視覚障害者と関わりの深い職業とされていたわけではありませんでした。
あん摩・はり・きゅうが視覚障害者の専門職として広く認知されるようになったのは、江戸時代からとされています。全盲の杉山和一氏は、優れた才能と努力によってはりの施術法のひとつである管鍼法を考案しました。世界初の視覚障害者教育施設といわれている杉山流鍼治導引稽古所を開設した人物です。これ以降、多くの視覚障害をもつ方があはきを生業とするようになり、世界にも例を見ない文化として定着していきました。明治時代に西洋式の医療制度が導入され、あはきが民間療法という位置づけになってからも、盲学校の職業教育として組み込まれて今日に至ります。
2006年の身体障害児・者実態調査によれば、視覚障害者の就業者数約81,000人のうち、あはき従事者は約24,000人に上り、全体の30%近くを占めています。近年は医師や弁護士など専門職に就く方も増えていますが、視覚障害者の就労の柱として、あはき業が大きな位置を占めているのは変わりありません。在宅医療の広がりとともに、こうしたあはきの専門性をいかせる場として注目されているのが訪問マッサージです。地域医療のなかでも、要介護や要支援の認定を受けている方は700万人を超える規模となっています。長い歴史のなかで養われた高度な触診技術と施術力は、患者1人ひとりの身体に寄り添う訪問マッサージの現場と非常に相性がよいとされています。訪問マッサージは、視覚障害のある施術者の活躍の場としても広がりを見せています。
◎視覚障害のある施術者が訪問マッサージで直面する課題

訪問マッサージの現場で視覚障害のある施術者が働く場合、目の見える施術者とは異なる課題があります。たとえば、訪問先までの移動や施術先での対応、書類作成や保険請求などの事務作業、採用や働きやすい職場環境の整備など、さまざまな場面で配慮が必要になります。これらは施術者本人の努力だけで解決できるものではありません。事業所全体で支援体制を整え、1人ひとりが安心して働ける環境をつくることが大切です。
〇移動と現場対応の負担
訪問マッサージは、患者の自宅や介護施設を訪問して施術を行う仕事です。そのため、1日に複数の訪問先を回ることが日常的に求められます。
視覚障害のある施術者にとっては、住宅街での移動や患者宅の間取りの把握、玄関での靴の脱ぎ履き、段差の確認など、1つひとつの動作に時間と注意が必要です。さらに、集合住宅ではオートロックやエレベーターの操作、表札の確認などにも配慮しなければなりません。また、公共交通機関を利用して移動する場合は、地方では駅から訪問先まで歩道が整備されていなかったり、点字ブロックが設置されていなかったりするケースも多く、移動そのものが大きな負担になることがあります。訪問件数を増やして売上を伸ばすには、限られた時間のなかで効率よく移動することが欠かせません。しかし、施術技術や接遇に問題がなくても、移動に時間を要することで訪問件数を増やしにくく、収入が安定しにくいという課題があります。
〇書類作成と保険請求事務の負担
訪問マッサージは、健康保険を利用して施術を提供するため、毎月のレセプト作成と療養費支給申請書の提出が欠かせません。書類には、患者ごとの施術内容や訪問日、訪問距離に応じた往療料、医師の同意書に関する情報などを正確に記載する必要があります。記入漏れや入力ミスがあると返戻となり、保険請求や入金が遅れる原因になります。また、医師の同意書の有効期限が切れたまま施術を行うと保険適用の対象外となるため、期限管理も重要な業務のひとつです。視覚障害のある施術者にとって、こうした書類業務は大きな負担になることがあります。読み上げソフトに対応していないシステムでは操作が難しく、表計算ソフトで独自に管理する場合も、自動計算の設定や読み上げ機能との連携を自ら構築しなければなりません。その結果、施術以外の事務作業に多くの時間を費やすことになります。請求事務を担当するスタッフを配置する方法もありますが、人件費がかかるため、小規模な治療院では導入が難しいケースも少なくありません。
〇採用と職場環境整備の難しさ
視覚障害のある施術者が訪問マッサージの現場で長く活躍するためには、採用時から職場環境まで、1人ひとりにあわせた配慮が必要です。事業所内では、安全に移動できる動線の確保や危険箇所の事前確認、火災予防を考慮した設備の導入など、安心して働ける環境を整えることが求められます。また、施術者を採用する際は、応募者の障害特性や必要な支援について事前に十分な話し合いを行うことが大切です。ハローワークや盲学校、老人ホームなどの関係機関と連携しながら、継続的に人材確保に取り組むことも重要になります。さらに、患者宅への移動をサポートするドライバーや、書類作成・保険請求を支援する事務スタッフを配置する事業所もあります。しかし、こうした人材の確保や研修には時間と費用がかかります。視覚障害のある施術者が安心して長く働き続けられる職場を実現するには、採用・育成・職場環境の整備までを一体的に進めることが欠かせません。
◎訪問マッサージの現場で実践されている合理的配慮の事例

視覚障害のある施術者が訪問マッサージで活躍するためには事業所全体での合理的配慮の仕組みづくりを行うことが鍵となります。視覚障害のある施術者の方が働く訪問マッサージの現場でもっとも特徴的なのは、施術者とドライバーがペアを組んで業務を行う体制となっている点です。ドライバーを単なる訪問マッサージの送迎担当ではなく、マッサージ師のマネージャーとして位置づけ、毎朝自宅まで迎えに行き、業務終了後は自宅まで送り届けます。日中はスケジュール管理、施術録の作成、患者の管理、健康状態の見守りまでドライバーが担当することで、施術者は施術そのものに集中することが可能です。ドライバー研修にマッサージ師も同席すれば、相互理解と訪問マッサージの患者に対して最善の施術をするための自覚を深める機会にもなります。
訪問マッサージの事業所内の環境整備も重要な配慮のひとつです。視覚障害のある施術者が安心して訪問マッサージで働ける環境をつくるためには、物の配置や動線への意識が欠かせません。事務所内のレイアウトを一定に保つことで、通路に物を置かないルールを徹底し、視覚に頼らずとも安全に移動できる空間を整えることができます。訪問マッサージの設備面では、火災や火傷のリスクを下げる観点から、火を使う調理器具を避け、ウォーターサーバーなどの操作がシンプルな機器を選ぶといった工夫が必要です。玄関や水回りなどの段差や境目についても、触覚や明暗の差で位置がわかるようにすることで、視覚に頼らずとも空間を把握しやすくなります。
こうした環境面での配慮は、特別な大規模工事を行わなくても、日々の運用ルールや備品選びの段階から積み重ねていけるものです。勤務日数や休憩時間の設計でも、視覚障害をもつ施術者の入社直後は短い勤務日数からスタートし、状況を見ながら段階的に勤務日を増やしていく方法が一般的です。お昼休憩では、時間を十分に確保してその時間帯には予約を入れない運用にすることで、施術者がゆっくりと休める工夫を行う事業所もあります。職場内では定期的なミーティングを通して業務上の注意点や情報を共有することで、特定の個人に負担が集中しない形でのコミュニケーションを実現することも重要です。こうした訪問マッサージの事業所全体で視覚障害者への配慮の取り組みを行うことで、視覚障害のある施術者の長期的な活力を支える基盤が整います。
◎視覚障害のある施術者の業務を支えるspotlog

spotlogは、スマートフォンで訪問記録から日報、療養費、支給申請書、同意書管理までを一元化できる訪問鍼灸・訪問マッサージ事業者向けのクラウド型業務支援システムです。spotlogの大きな特徴のひとつは、画面設計が非常にシンプルであるため、読み上げソフトとの親和性が高い点になります。視覚障害のある施術者が広く利用している読み上げソフトPC-Talkerなどと組み合わせることで、レセプトや同意書の内容確認、請求書類の最終チェックを音声入力で進められることが特徴です。spotlogのアプリもシンプルな構成のため、訪問先での日報入力やチェックインといった業務を読み上げ機能を活用して操作することができます。操作に慣れている施術者であれば、Bluetoothキーボードや音声入力機能を組み合わせることで、日報も無理なく作成することが可能です。同意書管理機能では、交付日と有効期限の情報を画面上で素早く確認できます。読み上げソフトと組み合わせれば、これまで自作の管理シートに打ち込んで読み上げソフトで確認していた作業の手間が必要ありません。
マッサージ療養費支給申請書のような複雑な書類もワンクリックで作成可能となっており、計算ミスや返戻のリスクを下げられます。サポート担当は現役の訪問鍼灸や訪問マッサージ施設者が務めており、操作方法だけでなく、制度の質問にも親身に対応できる体制となっています。最大2ヶ月の無料お試し期間を活用し、実際の業務環境で読み上げソフトとの相性を確認した上で導入を判断できるため、視覚障害のある施術者が請求業務を行う事業所でも安心して導入することが可能です。
◎まとめ
視覚障害のある方とあん摩マッサージは江戸時代から関わりが続いており、現代の訪問マッサージの現場でも多くの施術者が活躍しています。視覚障害をもつ方ならではの課題を、合理的配慮により解決することで、視覚障害のある施術者が安心して働ける職場が広がってきています。さらに、事務作業はspotlogで効率化すれば、本来の役割である患者への施術に集中できる環境が整うでしょう。spotlog導入のご相談は、当社までお気軽にお問い合わせください。